仕訳上達のコツ
簿記を勉強するにあたって一番重要なことはどれだけ正確に仕訳が出来るかです。
これは仕訳の問題だけでなく損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)などを作成する場合も同じです。なぜなら決算整理「仕訳」を行ってこれらを作成するからです。
ここではそんな大事な仕訳が苦手な人でも仕訳が出来るように段階別に勉強のコツを確認していきましょう。
目次
ルールを覚える
5要素に当てはめて論理的に考える
仕訳から取引を説明する
ルールを覚える
こちらについては「初めての簿記」でも書きましたがまずは仕訳のルールを覚えましょう。
ここで言うルールとは以下の2つです。
・ 5要素の貸借による増減を覚える
・ 勘定科目名を覚える
これらが分からなければ何もできません。その為皆さんしっかり覚えてくれます。ではなぜ仕訳が出来ない方がいるのでしょうか。
一般的には個別の単元を通じてその都度勘定科目を覚えているかと思います。例えば商品売買の論点を通じて「仕入」「買掛金」を覚えるという感じです。
しかし単なる暗記の為なんとなく商品売買では仕入や買掛金出てきたな、仕訳はこんな感じだったかなと形でしか覚えておらず、記憶があやふやとなり貸借逆で仕訳を記入する方が出てきます。
5要素に当てはめて論理的に考える
さて、前項ではルールを覚えただけでは仕訳を間違えてしまう可能性をお伝えしましたが、このような間違いを防ぐためには仕訳を5要素に当てはめて論理的に考えることを意識してください。
そしてそのためにも次のことを覚える必要があります。
・その勘定科目が5要素の何に該当するかを覚える
今これを読んでいる方の中で覚えた勘定科目が5要素の内どれに該当するのかしっかり覚えている方はどれくらいいるでしょうか。なんとなくイメージは出来るので「仕入の5要素は?」「買掛金の5要素は?」と質問すれば少し考えて答えられる方もいますが、即答できるレベルに仕上げている方はゼロに近いかと思います。(ちなみに仕入を資産項目と答える方が多いですが仕入は費用項目です。)
この勘定科目の5要素を覚えることで貸借を逆で記載する間違いが一気に減ります。
例えば100円の商品を掛で仕入れた。なお記帳方法は三分法を採用している。という問題の場合、仕訳は以下の通りとなります。
(仕 入) 100 (買掛金) 100
これを貸借逆に仕訳をきるということは
(買掛金) 100 (仕 入) 100
このようになるわけですが、5要素を意識していれば仕訳がどうだったのかあやふやになった場合でも「仕入は費用」だったな、今回は「費用の増加」だから借方に仕入…と考えていただければ貸借を逆に書いてしまうという間違いはなくなるというわけです。仮に「仕入は費用」が出なくても「買掛金は負債」を覚えていれば逆側に仕入を書けば答えを導き出せます。
簿記を始めたばかりの方は仕訳を丸暗記しているかと思います。これ自体は間違いではありません。しかしこれだけでは暗記した仕訳を忘れてしまうと戦うことが出来ません。仮に仕訳を忘れてしまっても勘定科目とその5要素を覚えていれば、論理的に考え、答えを導き出すことが出来るようになります。これが出来るようになれば仕訳の力が大幅にアップするはずです。
なお、勘定科目と5要素を結び付けて学習する方法としておすすめなのは、教材の巻頭や巻末に記載されている5要素別勘定科目一覧を利用するのいいでしょう。必ずしも一覧表があるとは限りませんのでない場合は自分でまとめたり、ネットで検索するのも良いでしょう。
仕訳から取引を説明する
最後のコツは仕訳からどういう取引があったのか説明出来るか、またそれが実際の取引と一致しているか確認することです。「論理的に考える」と重複しますが上項は問題文から5要素と照らし合わせておかしいところがないか、本項では仕訳から問題文に戻したときにおかしいところはないか、とそれぞれ分けています。
先の例題にて貸借逆できった仕訳で見てみましょう。
(買掛金) 100 (仕 入) 100
先ほどは取引(問題文)→仕訳の流れで見た時に貸借逆になっていることに気が付きましたが、実はこの仕訳だけを見た時に全くの間違いかというと、そういうわけではありません。
仕訳→取引で考えた時に上記仕訳は「掛で仕入れた商品100円を返品した(または値引きをした)」と読み取ることが出来ます。
つまり問題文が返品や値引きの問題であれば正解の仕訳となります。ただし今回は商品仕入れの問題の為仕訳から読み取った問題と実際の問題が異なることとなり仕訳がおかしいと気が付くことが出来ます。
もし自分が書いた仕訳が正しいか不安なときは仕訳から問題に戻したときにおかしくないか確認するの方法の1つとして挙げられます。
もう少し難しい論点でお話してみましょう。
(日商簿記2級レベルの内容の為3級の方は飛ばしていただいても問題ありません。)
例題
当社は国庫補助金100円を受け取り手元資金と合わせて備品を購入したが、圧縮記帳(直接減額法採用)を行っていなかった。
この問題では次の仕訳を書く方が多いです。
( 備 品 ) 100 (国庫補助金収入) 100
なお、正解は次の仕訳です。
( 備 品 圧 縮 損 ) 100 ( 備 品 ) 100
解説前に簡単に圧縮記帳とは何か及びそれに関連する仕訳を記載しておきます。(減価償却除く)
圧縮記帳とは①国から固定資産を購入する際の資金の補助を受け、②その補助金と手元資金により固定資産を購入し、③補助金の効果を最大限生かせるように補助金相当額の圧縮損を計上する、というものです。(③の詳しい説明は割愛します。)
①補助金受取時
( 現 預 金 ) 100 (国庫補助金収入) 100
②備品購入時
( 備 品 ) 500 ( 現 預 金 ) 500
③圧縮記帳
( 備 品 圧 縮 損 ) 100 ( 備 品 ) 100
見比べていただければわかりますが、今回の問題であれば③が未処理という問題の為③の仕訳がそのまま答えとなります。
間違えた仕訳は①~③が混ざっています。これは圧縮記帳が3段階あるということが整理出来ていない為ですが、そもそも間違えた仕訳を見た時におかしいと思えるかが大切です。
先のコツ2点で確認してみましょう。
勘定科目は合っています。また五要素の増減に当てはめても備品という資産の増加と補助金をもらえたことによる収益の増加ですので明らかにおかしいとは言えません。
しかし仕訳から問題文に戻すと「備品の増加」と「収益の増加」の為、「備品100円をタダでもらった」としか戻すことが出来ません。
どうでしょうか?今回当社はタダで備品100円もらいましたか?
違いますよね。①国から補助金をもらい②自分で固定資産を買っています。
先に述べましたが今回の例題で間違えた原因は圧縮記帳の3段階を理解していなかったことによるものです。しかし、解答を見たところでこの3段階に気が付く方はいないでしょう。その為仕訳を単純に丸暗記するだけに留まり、同じ間違いやここから派生する応用問題で丸暗記した仕訳を書いて間違えるということを繰り返します。
このようなことを防ぐためにも書いた仕訳と解答が全然違う時は一度自分の仕訳を問題文に直してみてください。辻褄が合わず、そこから自分が間違えた原因を突き止めることが出来ます。
まとめ
いかがでしょうか。
簿記を勉強するうえで避けては通れない仕訳。
とにかくガムシャラに解いて、暗記して、力業で押さえる、それが悪いとは言いません。
(そもそも最初は暗記することからスタートですしね。)
ただ折角簿記を勉強するのであれば知識を丸暗記で終わらせるのはなく、どういうシステムで簿記が構築されているか、その一端を意識して勉強していただくと飛躍的に成長できるようになるかと思います。(私自身は複式簿記というシステムに心奪われております。)
その為にも仕訳が苦手な方は上記のコツを参考に勉強していただければ幸いです。
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